小学生の姪(めい)っ子「ももちゃん」は、認知症のひいおばあちゃあんと一緒に住んでいました。 老人性うつ病の祖母と暮らした経験から、「ももちゃん」への語りを通して、ひいおばあちゃんとの心地よい過ごし方についてつづります。
2014年8月29日金曜日
一緒にいるだけでもいいんだよ
ももちゃん、おばあちゃんは、耳もほとんど聞こえないし、一緒にいても会話もできなくて、どうしていいかわからなくなっちゃう?そういうときは、となりに座っておばあちゃんを見ててあげるだけで、いいんだよ。
私のおばあちゃんはね、うつがひどかったとき、家にヘルパーさんが来ても、ずっとおばあちゃんの妄想の人と会話をしてて、ヘルパーさんと話しもしてくれなかったことがあったの。
ヘルパーさんが帰るときに私が、「今日はすみません、せっかく来ていただいたのに…」って言ったら、「『見守り』も一つの大事なケアなので、いいんですよ」って言ってくれたの。そのとき私は「へぇ、見守りって言うんだ!」って思ったよ。
実際、おばあちゃんは、だんだんそのヘルパーさんと会話もできるようになって、一緒に歯みがきとか、洗濯をするようになったの。知らないふりしてたけど、ヘルパーさんがいてくれてることは感じてたんだね。
だからももちゃん、こんな、小さなことでもいいんだよ。ちょっと時間を取れるときとか、なにかのついでがあるときは、となりに座ってみてあげてね。
2014年8月28日木曜日
ねこはおばあちゃんが大好き
ももちゃん、ねこって好き?かわいらしくてなでてあげようとすると、いきなり怒ったり、ひっかいたりしてきたりするね。
うちの実家ではねこを飼ってたんだけど、ねこはおばあちゃんの部屋で寝るのが大好きだったの。高いところが大好きで、夜になるとおばあちゃんの部屋のタンスの上に乗って寝た。
最初はおばあちゃん、「ねこが来ちゃうのよ」といやがって棒なんかをふり回して追い出そうとしてた。でもだんだん心の調子がよくなると、そのままにしてあげるようになったよ。
どうしてねこはおばあちゃんの部屋がよかったんだろう?それは、ねことおばあちゃんがよく似てたからじゃない?「ああしなさい、こうしなさい」って、人から言われるのが大きらい。なんでも自分が思うようにしたかったんだね。
おばあちゃんの部屋でなら、なでられたり、ちょっかいだされたりしないで、静かに眠れるから、好きだったんじゃないかな。
だから、おばあちゃんにはねこに言うつもりで話しかけると、上手くいった。
×:「おばあちゃん、おみそ汁もちゃんと飲んで。」
○:「おばあちゃん、こんどはおみそ汁、いかがですか?」
っていう感じ。
認知症でも、うつでも、やっぱりおばあちゃんはおばあちゃん。年上の大人に話しかけるつもりで、心をこめて丁寧に言うと、上手くいったよ。
2014年8月27日水曜日
だんだん赤ちゃんに…
ももちゃん、今日はね、私のお母さんのお友達で、介護(かいご)のせんぱいだった方の言葉を伝えたいと思って。
お友達がうちに来てちょっとお母さんと話してて、だんなさんのお母さんの話になったときね、こう言ったの。「だんだん赤ちゃんに戻っていくんだねぇ」って。
だんなさんのお母さんはもうおしめをしてたって言ってたかなぁ。お友達は長年遠くまで、介護のために通っていたんだよね。
介護をする人にしてみたら、自分よりもずっと年上の人の世話に骨を折るなんて、「もう!なんで!?」って疲れちゃうときもあるかもしれない。でも、「赤ちゃん」と思ったらどう……?なにも自分でできないの、当たり前なんだね。
「赤ちゃん」、なんてかわいがる気持ちを持って呼べたお友達の方は、本当に長い間の介護の苦労を乗りこえたんだと思う。私のお母さんはね、いそがしい合間をぬって、お友達が車を出してくれたりして、おばあちゃんを病院に連れて行けたり、すごく助けてもらったんだよ。
2014年8月26日火曜日
小さなことが気になって…
ももちゃん、最近おばあちゃん、夏の暑い日でも戸をすぐ閉めようとして大変なんだって?この前は、ずっとせん風機のことが気になってたみたいだね。せん風機が首ふり機能で戸の方を向くから、「開いた戸から涼しい風が逃げちゃう」って心配して何度も言ってたね。
おばあちゃんの言うこと、変でしょう?本気にしなくていいんだよ(笑)。ふつうの人ならなんでもないような小さなことがずっと気になって、頭からはなれなくなっちゃう。これは、「うつ」症状のひとつじゃないかな。「うつ」は、「行動・心理症状」と言って、認知症の中でも、おばあちゃんがストレスを感じたりして、起きる方の症状なんだって。
ももちゃんも、なんかイライラしたり、いやな気分になったりすると、ただの虫さされとか、かさぶたが急に気になって、何回もかいて、ひどくなっちゃったりしない?落ち着かない気分だと、いろんなことが心に引っかかっちゃうんだよね。
おばあちゃんも、リラックスする時間が増えたら、少しよくなるかなぁ?おばあちゃんはお喋りが大好きだから、「ふんふん」ってちょっと聞いてるふりしてみてあげたら?気が済めば、少しおばあちゃんも気が楽になると思うよ。
2014年8月25日月曜日
「うす味」や「だし」が食欲のカギ!?
ももちゃん、おばあちゃん、しょっぱい食べ物が大好きって言ってたけど、最近はそうでもないんじゃない?
「おばあちゃんはちょっとじゃだめだから」って、お豆腐におしょうゆを沢山かけてもらったら、「これじゃぁしょっぱくて食べられないね」と気味悪そうにして、箸でしごきながら食べてたよ。
あと、私がお野菜にぽん酢をかけてたら、「あたしにもかけとくれ」って。前は、ぽん酢じゃ物足りなくてさらにしょうゆをかけた気がするんだけど、私と同じくらい、ぽん酢を少しかけただけで、おいしそうに食べてたよ。
認知症になると、素材の味がよくわかるのかなぁ?
私のおばあちゃんもね、うつになってから、「うす味」や「味なし」が好きになっちゃった。ゆでたほうれん草も、納豆も、何もかけないで、そのまま食べるようになったの。
そして、だしがきいたおかずをものすごく沢山食べるようになった。私のお母さんは、かつおぶしでだしを取ってから煮物を作ったりするようになった。おみそ汁も、だしで取るようになってから、全部飲むようになったみたいだったよ。
ももちゃん、おばあちゃんにおしょうゆやぽん酢をかけてあげるときは、「おばあちゃん、このくらい?」って、ちょっとかけたら聞いて、少しずつかけてあげてね。
2014年8月23日土曜日
認知症なんて、どうってことないんだね
ももちゃん、おばあちゃんが認知症だって、お友達に知られたら、いや?恥ずかしいからだまってたい?
私ね、大学生のころ、クラスの仲いい友達に「最近おばあちゃんがぼけちゃって、大変なんだよね」ってこぼしたことがあるの。たぶんそのとき、私は眉間にしわが寄っちゃって、ため息ついてたと思う。
韓国(かんこく)人だった友達は「そういうおばあちゃんいるよね、ははは!」って、明るく笑ったの。「私も知り合いとか近所でそういうおばあちゃんいるいる!」「年取ったらなるんだよね、しょうがないしょうがない♪」っていう感じで、全然いじわるな笑いじゃなかった。私、彼女が可笑しそうに笑うからびっくりしちゃった。
何年かして韓国に旅行したら、なんとなくわかったの。韓国では、みんなおじいさん、おばあさんを尊敬して、知らない人にでも、いつでも助けてくれたよ。
例えば、電車に乗っていて席が空いたらね、遠くのドアの前に立っているおじいさんに、「席が空いたから座ってください」って、若い人が呼びに行ってくれたの。その間、だれも空いた席に座らないで、おじいさんが座るまで待っていてくれた。
ひざや腰が痛くなったり、歩くのが不便になったり。おじいさん、おばあさんになったら、若いときと同じにはできなくなる。当たり前のことと思って、「ま、いいよ」「みんななるんだから」って思っていれば、認知症だって、そんなに特別なことと思わなくてもなくてもいいんだね。できる人が、少しずつ助けてあげればいいんだね。
2014年8月22日金曜日
どうして怒(おこ)っちゃいけないの?
ももちゃん、おばあちゃんと話してるときの私は変?自分の顔をおばあちゃんの目の前の高さにして、背中をさすりながら、しゃべるのはゆっくり。大げさな身ぶりもしたりする。
「ダメだよ!」「おばあちゃんちがう!」「おばあちゃん早く!」は言わない。ふつうならビシッとしかりそうなことを、にっこり笑って、私、遊んでいるみたい?(笑)
「遊んであげるくらいの気楽な気持ちでいいんだよ~」って言ったらびっくりしちゃう?認知症の人には大声を上げたり、怒りをぶつけたりしちゃだめって、みんなよく言うし、いろんなところに書いてある。だけど、毎日毎日変なことばかりしてるのにがまんできないかな?(笑)。どうしてだと思う?
私のお母さんの方のおばあちゃんは、老人性うつ病と言われたって、話したね。一緒に住んでて、私の家族が見つけた答えは、「おばあちゃんにストレスがなくなって、心が自由で楽になると、おばあちゃんの具合がよくなるから」。
私たちもはじめはよく怒った。「おばあちゃん、いつまで寝てるの!?」「おばあちゃん、ひじきだけじゃなくてにんじんも食べて!」みたいなことね。
おばあちゃんは言えば言うほどいやがって、反対のことをしようとした。「○○さんがいるからご飯はいただきません」とか、こわい言い方をする人をきっぱりいやがった。ご飯を抜いたり、夜寝なかったり。ますます身体の具合が悪くなった。
「実家に帰ります」と、家出して駅まで行っちゃったのもこのころ。ものすごく必死な顔で、力いっぱい、お母さんの腕をふり切ってしまったんだって。
「うちのおばあちゃんったらこの前もね…」おばちゃんの何でもかんでもが大変で、家族同士も、きっと外でも、ぐちばかり言っていた。10年くらいかかったかな、だんだん私たちも慣れて、「まずはおばあちゃんにきらわれないように…」やさしい言い方に変わって、生活からどなり声が消えたころ、おばあちゃんは「寸劇(すんげき)でこう言ってるのよ」なんて妄想もなくなってきて、ご飯も3食食べられるようになった気がするの。
私は、認知症も、同じことだと思ってる。聞こえてないとか、わかってない、忘れちゃうとか、そうは思えないの。ももちゃんだって、ガミガミ怒られるのはいやだよね。認知症になると、なんでも、正直になるように見えるの。おばあちゃんは今、ふつうの人よりもソワソワしてる。その分、相手の怒りをもっともっと感じやすいと思う。
おばあちゃん、元気そうに見えるけど、もしかしたら、心の中ではいつも綱(つな)わたりをしてる気分で、ヒヤヒヤしているかもしれないよ。「大丈夫だよ」って、ちょっとでも気を楽にさせてあげたいね。
2014年8月21日木曜日
食べきれないおかずがあると…
毎食毎食言うから、息子さんのじぃじなんか、となりの席で、くたびれちゃったみたい。そうだよね、「これ手ぇつけてないから!」って言うけど、お豆腐はしょうゆがびたびたで、おばあちゃんが箸で細かくしちゃったもんね。「箸でかき回したのなんかいらないよ!!」
私のお父さんの方のおばあちゃんも、元気なんだけどね、よくみんなでお食事に行って、天ぷらとか多かったりすると言うの。「ねぇこれよかったら食べて、手ぇつけてないから。」これは、本当に箸付けてないんだけどね。
おばあちゃんたちは戦争中に苦しい生活をしてきたから、食べ物を残すなんて、絶対にできないんだよね。きっと昔はこうして、食べられない分はゆずりあってきたんだね。今どきは、食べ物を残すのはよくあることだけど、認知症のおばあちゃんには、今の時代が、わからない。
食欲がなかったり、噛めないとか、理由があって食べられないと、「食べない」とは言えない。「あげるよ!」ってなっちゃうんだよね。おばあちゃんは、食事のマナーもちょっと忘れてきちゃってる。だから、さっきまで箸付けて食べてたおかずも、差し出しちゃうんだね。
押しつけられた感じですごく腹が立ったりもするんだけど、おままごととか、ギャグだと思って流してあげてね。
「ありがとう」と言って一度お皿をおばあちゃんから遠ざけちゃうの。食べてたおかずが終わったころにそーっと見せたら、好きだったり、食べられるおかずのときは、何も覚えてない顔で、「これ食べちゃおうかな」って言って食べてたよ。
認知症のおばあちゃんは、目の前のこと、1つずつしかできないけど、意外とすごい持久力で食べられるの。だから、「どうですか?」って根気強く試してみると、けっこう栄養とれたりするんだよね。
2014年8月20日水曜日
おばあちゃん、タイムスリップしちゃった
ももちゃん、最近おばあちゃん、ご飯のあと、食器を片付けようとしたり、お皿を洗おうとしてくれるんだってね。前は、「なんにもしないで、すまないねぇ」って、家族がやるのにまかせてたのに。
私が横浜に戻る日も、夕食のあとちょっとみんながバタバタして、お皿を置いた流しに人がいなかったら、「あたしが洗うよ!!」と椅子から立ち上がってたね。ももちゃんのママが流しに立ったら、「あそこに一人と、あと向こうも一人やってくれてるから大丈夫だな。」ってひとり言とを言っていたよ。おばあちゃん、若い頃の、しっかり屋さんの女主人に戻ったみたい。
これも、認知症の症状なんだって。「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」と言って、「ここは、いつ、どこで、自分はだれなのか」が、よくわからなくなっちゃうんだって。そこで昔に戻っちゃうのは、ちょっと妄想も入っている気がするけどね。
私のおばあちゃんも、老人性うつ病って診断されたんだけど、私のお母さんを突然小中学生みたいに「ちゃん」づけにしてて呼んだり、結婚前に好きだったっていう男の人の名前を口にしたりしていたよ。
お母さんは、「一番よかったころの自分に戻っちゃうんだね。」って言ってた。私はこういうとき、間違ってても、おばあちゃんが見ている世界を否定しないで、なるべく話を聞いてあげてる姿勢で、気持ちを読み取るようにしてる。ももちゃんのひいおばあちゃんも、「いいんですよ、座っててね」と背中をさすってあげたら、耳が聞こえないけど、ちょっと落ち着いたみたいだったね。
2014年8月19日火曜日
おばあちゃん、優(やさ)しいよね
ももちゃん、おばあちゃんって優しいよね。おばあちゃんのそばに行くと、「あんた、ここに座んな」、「これ食べな」、「あんたも飲みなさい」……。結婚前、初めて実家にあいさつに行ったときから、いつもお客さんとして温かくもてなしてもらってる。
会う前におばあちゃんは認知症だって聞いてい心配したけど、「あはははは!」って、楽しそうに笑うおばあちゃんに、ほっとしちゃった。
おばあちゃんがこんなに優しくて明るいままだったのは、おばあちゃんの性格もあると思うけど、家族の温かいケアのおかげで、毎日楽しく暮らせてたからだと思うの。
認知症の症状って、2つあるんだって。脳みそが縮(ちぢ)んでいくせいで起きる、病気そのものの症状と、心がストレスを感じたりして起きる、あとからなる症状。
家出して帰れなくなったり、乱ぼうな言葉を言ったり、私たちが「嫌だな」と感じることはほとんど、ストレスのせいで起きる症状なんだって。
おばあちゃんは、ちゃんと薬も飲んでたし、お家で気持ちよく暮らせてたから、そういうことは、ないみたいだったね。上手に過(す)ごせてたってことだよね。
参考:
『横浜市認知症サポーター養成講座』(第5版) 2012年1月 発行/編集 まちかどケア協働事業
2014年8月18日月曜日
認知症サポーターになったよ
ももちゃん、これ何か知ってる?腕輪の形をしています。
今年の2月、近所のケアプラザで「認知症(にんちしょう)サポーター養成講座(ようせいこうざ)」を受けてきました。2時間くらい、お医者さんのお話を聞いたりビデオを見たりして、終わると「認知症サポーター」の印にこのリングをもらえるの。
認知症のおじいさんやおばあさんは、一人では生活できないから、本人や家族を支えるのに、ご近所の人も、どんな病気か知っていた方がいいんだよね。
認知症のおばあちゃんがすることは、ひ孫のももちゃんから見ても不思議なことばかり?講座で、「えっ、なんでそんなことするの!?」ということも、病気のせいだと知りました。これから、講座で聞いてきた話や、私のおばあちゃんの話なんかも、少しずつお話しようと思います。
おばあちゃんが、少しでも、お家で叱(しか)られたり、怖くなったり、不安になったりしなくなって、みんなで楽しく暮らせるといいね。また、ちょくちょく帰省したいです。
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